AIでコードが書ける時代に、PMの市場価値はどうなるのか
「AIがコードを書けるようになったら、PMの仕事も減るのでは」
そう聞かれることが増えました。私はPMとして約21年やってきて、今も現役でポイント系システムのPMを担当していますが、AIによってPMが不要になるとは考えていません。ただし、求められるPMの仕事は変わっていくと思っています。
この記事は、統計データに基づく市場予測ではなく、現役PMとしての私自身の観察と見立てです。その前提でお読みください。
AIエンジニアリングの現場で起きている変化
海外のITベンダーの解説記事では、「エージェンティックエンジニアリング」という考え方が取り上げられ始めています。AIエージェントに実装やテストなどを任せ、人間がその結果を確認・評価しながら開発を進める考え方です。この言葉はOpenAI共同創業者のAndrej Karpathy氏が名付けたとされ、IBMは2026年2月に公開した解説記事の中で「エンジニアリングの専門知識を使って、ソフトウェア開発プロセス全体でAIエージェントをオーケストレーション・監督する実践」と整理しています。Google CloudもAIエージェントが計画・実装・テスト・修正までを担う「Agentic Coding」を紹介しています。ただしこれらはあくまで海外ベンダーによる用語解説であり、日本のSES・受託開発の現場に広く浸透しているという意味ではありません。
この流れの中で語られているのが、「エンジニアの役割は、手を動かす人からエージェントを監督・指揮する人へシフトする」という指摘です。実装のスピードそのものよりも、「何を作るべきか」「AIが出したものの、どこがおかしいかに気づけるか」を判断する力の方が重要になってきている、ということです。
この変化は、PMがこれまで担ってきた「目的を定める」「優先順位を決める」「リスクを見つける」「最終的な意思決定につなげる」という仕事とも重なる部分があります。
AI時代に、PMの何が問われるようになるのか
PMの仕事は、コードを書くことではありません。要件を整理し、優先順位を決め、進捗の裏にある実態を見抜き、意思決定をすることです。
「進捗どうですか?」「90%です」
私も新人PMの頃は、この数字を聞くと「あと少しだ」と思っていました。でも実際には、最後の10%に結合時の問題や仕様の認識違いが残っていて、そこから予定以上に時間がかかることがあります。21年PMをやってきて思うのは、PMの仕事は「90%」という数字を集めることではなく、その90%が何を意味しているのかを確認することだということです。
AIが実装のスピードを上げても、この「数字の裏を確認する」という判断は代替されにくいというのが実感です。AIの活用が進む現場では、今後こうした判断がさらに重要になっていくと考えています。
実際に今担当している現場でも、エンジニアはコーディングからエラー原因の調査(エラーメッセージとソースをAIに渡して調べる)、詳細設計書の作成まで、AIをかなり全面的に使っています。私自身も簡単な調査やBacklogのAI機能での情報整理に使っていますし、最近は基本設計書をAIで書けるかを試しているところです。
一方で、AIの回答をそのままチケットに貼り付けて、自分の判断を挟まないエンジニアが出てきたこともありました。誰が何を確認し、どこまでを自分の判断として引き受けるのか。ここを整理するのもPMの仕事です。今は、AIの出力を貼る前に本人が内容を確認してからチケットにする運用に変えています。
現場で実際に判断が必要になる場面としては、以下のようなものがあります。
- AIによって複数の実装案を短時間で試せるようになったとき、どこまで検証してから進めるか
- 開発速度が上がった分、どの機能を優先し、どこにリソースを割くか
- 品質・コスト・納期のどこで折り合いをつけるか
- AIの回答をそのまま成果物にしてしまう「判断の空洞化」を、誰がどう防ぐか
つまりAIによって実装を効率化できる範囲が広がるほど、「何を作るか」「どこまで確認すれば十分か」という判断の重要性は相対的に高まると私は考えています。プログラマーの価値が下がるという単純な話ではなく、判断と監督の比重が高い役割ほど、AIに代替されにくさは増すはずだ、というのが私の見立てです。ただし、それが単価や求人数の増加にそのままつながるかどうかまでは、この記事では言い切れません。
PMOの視点から見ても同じ変化が予想される
この変化はPMだけでなく、PMOにも関わってくると考えています。現状、SESのPMO案件の多くは進捗集計や課題管理、報告資料の作成が中心で、全社的なAI活用ルールの設計まで任されるケースはまだ少数派だと思います。ただし今後、複数のプロジェクトを横断して見るPMOが、プロジェクトごとのAI活用ルールや成功・失敗事例を整理し、他のプロジェクトへ横展開する役割を担うケースも出てくると私は予想しています。「あのプロジェクトではAIにここまで任せてうまくいった」「この現場では人間が確認すべき範囲を広げた方がよかった」といった知見を整理し、組織全体に還元できるのはPMOならではの価値になり得ます(PMとPMOの役割の違いについてはこちらの記事で詳しく解説しています)。
「市場価値が上がる」と楽観するだけでは足りない
ここまでの話は、PMなら誰でも自動的に市場価値が上がる、という意味ではありません。
進捗を集計する、議事録を作る、報告資料をまとめる、といった仕事は、AIによってこれからさらに効率化されていくはずです。一方で、「何を作るのか」「何を優先するのか」「どこにリスクがあるのか」「誰が判断すべきなのか」を整理する仕事は残ります。
同じ「PM」という肩書きでも、この2つの差はAI時代にこれまで以上に大きくなると考えています。
| 管理作業にとどまるPM | PMとして価値を出す仕事 |
|---|---|
| 進捗を集計する | 遅延の原因を見抜く |
| 会議を設定する | 意思決定を前に進める |
| 報告資料を作る | 何を報告すべきかを判断する |
| タスクを割り振る | 優先順位を決める |
| AIツールを使える | AIをどこで使い、どこで人間が確認するかを決める |
右側は、AI時代に新しく生まれた仕事ではありません。本来PMが担ってきた仕事です。AIが浅い部分の作業を巻き取るほど、この右側をやってきたかどうかの差がはっきり出るようになる、というのが私の見立てです。
市場価値を上げたいなら、日頃から意識すべきは以下のようなことだと考えています。
- 進捗の数字をそのまま受け取らず、裏にある実態を確認する習慣を持つ
- 「作れるかどうか」ではなく「作るべきかどうか」を判断する視点を磨く
- AIに任せる部分と、人間が責任を持つべき部分の線引きを自分の中に持つ
AIツールの操作に慣れるだけでは身につかず、現場で判断を積み重ねることで磨かれていく部分が大きいと感じています。
よくある質問
Q. PMの経験しかなく、AIツールに詳しくなくても大丈夫ですか。
AIツールの操作方法は、PMとしての判断経験に比べれば後から学びやすい領域だと考えています。AtomBaseでは、AIツールの習熟度よりも、これまでのPM経験の中身を重視しています。
Q. PMからPMOへ、あるいはPMOからPMへのキャリアチェンジは可能ですか。
PMとPMOでは求められる視点が異なりますが(詳しくはこちらの記事で解説しています)、どちらの経験も互いに活きると考えています。
Q. 今の年収・単価が、AI時代でも維持できるか不安です。
これは統計的に断言できることではなく、案件や本人の経験によって変わる話だと考えています。その上で、AtomBaseでは客先単価を還元する仕組みを取っているため、参画案件の単価がそのまま条件に反映されます。カジュアル面談で現在の状況をお聞きできれば、その場で概算をお伝えできます。
AtomBaseでPM・PMOとして働くということ
AtomBaseでは、PM・PMOという肩書きだけで案件を紹介するのではなく、「その案件で何を任されるのか」を判断材料にしています。進捗管理が中心なのか、顧客との調整まで任されるのか、意思決定にどこまで関われるのか。同じPM・PMO案件でも、経験できることは大きく違うからです(SESで転職する際に確認してほしいポイントはこちらの記事でも解説しています)。
代表自身が金融系SIerに16年勤務し(SE・プロジェクトリーダーを経て後半12年はPM)、その後Webシステムやスマホアプリの開発でもPMを務め、通算21年PMを続けてきました。「今の経験ならどの程度の案件を狙えるか」「次にどんな経験を積むとPMとしての幅が広がるか」といった話も、代表自身が面談で直接お話しします。
AtomBaseでは客先請求単価の65%を給与にしています。単価が下がれば給与も下がる仕組みなので、良いことだけでなく前提も含めて面談でお伝えします。詳しい考え方はこちらの記事で解説しています。
まとめ
AIによってPMが不要になるとは考えていません。ただし、PMなら誰でも市場価値が上がるとも考えていません。この記事は統計ではなく、私自身の観察と見立てです。その前提で、次の案件やキャリアを考えるときに確認してほしいことをまとめます。
- その現場で求められているのは「集計・報告」中心か、「判断・意思決定」中心か
- AIの活用が進む現場かどうか、進んでいるなら自分がどこに関わることになりそうか
- 単価・還元率がどう決まっていて、下がる場合の条件はどうなっているか
「今の自分のPM経験が、AI時代にどう活きるのか知りたい」という方は、AtomBaseのカジュアル面談でお話ししませんか。履歴書不要・服装自由・オンライン対応可です。